てんかん Q&A
犬と猫の抗てんかん薬
犬の抗てんかん薬:現在効果があると認められている抗てんかん薬
投薬を開始して発作頻度が投薬前の50%減少が当初の目標ですが、最終的に3カ月に1回未満が大きな目標となります。
●ゾニサミド(コンセーブ):錠剤:1日2回
日本で作られた唯一の抗てんかん薬です。現在はファーストライン(第1次選択薬)として使用されています。この薬剤の利点は、過去に使用してきたフェノバルビタールと同等の効果を持ち、なおかつ副作用がほとんど認められないことが最大の利点となります。稀に食欲廃絶を呈するワンちゃんには使用できません。また、使用開始後に急性肝障害起こした例が報告されています。定期的に診察を受けることで心配はありません。理想的な血中濃度は、おおよそ20~50μg/mlです。
●臭化カリウム:一般的に液剤に調剤して処方:1日2回
臭化カリウムは試薬として出ているものを調剤して利用されています。最も古い抗てんかん薬ですが、ゾニサミドと併用することで約70-90%のてんかん発作に効果があります。この薬剤の利点は、安価なことと肝障害などの副作用がないことです。効果の発現に時間がかかる(約2-3カ月)ことです。
また、長期(数年以上)に使用していることで臭素中毒が発現する場合があります。
ゾニサミド単独療法で3カ月に1回未満の効果が得られなかった場合にはこの薬を併用して飲ませていく方法があります。
副作用は消化器症状(吐いたり下痢したり、重度の場合には膵炎)、無気力、多飲多尿、運動失調、昏迷などがありますが、いずれも血中濃度が上昇した場合に顕著になる症状なので飲んでいる薬の量が多くなった場合には注意する必要があります。また、慢性の間質性肺炎による発咳が出ることがあります。
●レベチラセタム(イーケプラ)
人のてんかん臨床でも近年使用さている抗てんかん薬です。迅速に効いて副作用も少なく効能としては申し分ありません。欠点として高価であること、1日3回投与という点です。
特に大型犬では経済的問題が出てくるため頓服的な使い方も可能です。
ゾニサミドと臭化カリウム併用にレベチラセタムを加えることも可能ですが、多くの場合上記2剤でコントロールできないてんかんは難治てんかんの可能性があるため必ずしも良好な結果となり得ません。
使用方法は今後変わるかもしれません。ファーストラインとして最初からレベチラセタムを投与していく方法、臭化カリウムの替わりにゾニサミドと併用する方法などがあります。また、肝障害や肝機能低下を持っている動物にも投与可能です。
●イメピトイン(ペクシオン)
欧州ではかなり使われている抗てんかん薬ですが日本では販売されていませんので輸入薬として使えます。当院では臭化カリウムの副作用が出現した症例はイメピトインを替わりに投与して良好な結果を得ています。短所は高価であることです。
高率に多飲多食・肝酵素上昇が出現すること、血液学的異常発症が4%認められていることから、現在当院ではフェノバルビタールは使用していません。
●フェノバルビタール:錠剤、散剤:1日2回
この薬は犬のてんかん発作の約70%に対して効果が認められています。この薬剤の利点は安価なことだけです。
猫の抗てんかん薬
●フェノバルビタール:1日2回
理想的な血中濃度は、おおよそ20~30μg/mlです。
猫での副作用は少なめですが、やはり初期(1-2週間)の副作用として歩様の乱れやなどが発現することがあります。体が慣れれば問題有りません。肝酵素上昇もあまり認められないのでファーストラインとして使用されています。
●ジアゼパム:錠剤:1日2-3回
猫では犬と違ってジアゼパムの長期投与が可能です。注意しなくてはならないのは、まれに投与後の急性肝壊死という病態が起こることがあります。予防するのには投与後3日から5日で血液化学検査をすることが大切です。
通常、フェノバルビタール単独で発作コントロールが難しい場合に併用薬として使用していくことが可能です。
●レベチラセタム:錠剤:1日3回
肝臓で代謝される上記2剤と違って腎臓から排泄されるため、肝障害や肝機能低下を持っている猫に推奨されます。
●タウリン:1日1-2回 (サプリメントとして投与)
自然発生てんかんの猫における脳内タウリン濃度が低く、これらにタウリンを経口投与したところ効果的であったという報告があります。
私たちのの経験からもタウリン投与によりてんかん発作が減少すると考えています。しかしすべての症例でその発作をコントロールできるわけではありません。よって以後述べる抗てんかん薬の補助として投与する方法がよいと思われます。
当院では猫に対して現在下記の抗てんかん薬を最初から使用することはありません
●ゾニサミド:1日1-2回
猫でも有効なことが最近の報告でわかってきました。犬と比べて薬の半減期が長いため、定期的な測定が必要となります。
副作用に食欲廃絶が認められることが多いため最初から使用することはありません。
てんかん重積状態 あるいは 群発発作時の対処
●ジアゼパム(セルシン):静脈注射:1日2-3回
犬で長期的な連続使用をすると効果が減少していくことがわかっています。
●クロナゼパム(サイレース):筋肉注射:1日2回
長時間作用型の抗てんかん薬で普段使用している抗てんかん薬に併用することで群発発作やてんかん重積時の発作抑制に効果的です。
●イーケプラ:静脈注射:1日3回 または 投薬
●ミダゾラム:鼻腔内噴霧投与
ジアゼパムの坐薬投与と比較した報告からミダゾラムの鼻腔内噴霧投与が効果があることがわかっています。ジアゼパムの坐薬は効果が少なく短いことから現在は使用していません。
その他の抗てんかん療法
中鎖脂肪酸を添加した食事を摂ることで抗てんかん効果があることがわかり、これに準じた療法食が発売されています。なかなか発作頻度が少なくならない、あるいは高齢犬で徘徊や夜泣きがひどい場合には主治医にご相談してください。 ネスレ ニューロケア