渡辺動物病院

獣医師によるコラム

ペットを守る!災害対策

 東日本大震災の余波が未だ続いておりますが、みなさんご無事でしょうか?
震災のニュースが連日報道される中、びしょ濡れで震えているワンちゃん、瓦礫の中を彷徨うワンちゃん、避難所の屋外や車の中で生活しているワンちゃん・ネコちゃんたちを見て、ペットの防災対策に不安を感じている方も多いのではないでしょうか?

 そこで、今回はペットオーナーとしての避難時の行動、日頃の心構えと防災グッズについてご紹介します。

避難時の行動
                 
まずは自分の安全を第一に考えましょう


災害が起きた際に最優先されるのは、いうまでもなく人命です!!
まずは、人間の避難準備を整えておきます。その次に、ペットを避難所まで運ぶ手段や避難所での暮らし方、ペット用品の確保などについて考えるようにしましょう。

できるだけ同行避難をしましょう

自宅に残されて自力で生活できる動物はいません。
自宅から逃げ出した犬が野良犬化し、問題を起こす危険もあります。
場合によっては、車の中が動物にとって一時的な避難場所になる事もあります。
事前にどこの避難場所に行くのかも確認しておきましょう。

避難の際は必ずリードorキャリーバッグへ!    

小型犬や猫は基本的にキャリーバッグに入れて運びます。
災害などで状況が急激に変化すると、動物は人以上にパニックに陥ります。安全な場所に着くまでは、キャリーバッグの扉を開けないようにしましょう。
中~大型犬の場合、リードをつけて歩かせることになります。避難経路に瓦礫やガラスなどが散らばっている場合がありますので、靴を履かせるのが一番良いです。また、靴が無い場合は人間用の包帯やタオルなどを足に巻き付けて保護するのもひとつの方法です。

家族やご近所で協力を

多頭飼育の場合1人で何頭も運ぶのは大変なので、いざという時のことを考え、家族やご近所の方と協力体制を整えておくと良いでしょう。
避難生活を送るための心構え

           
人間用スペースと動物用スペースは切り離されている

避難所では飼い主と犬が同居できるわけではなく、人は建物内で寝起きし、ペットは屋外のスペースで生活するというケースがほとんどです。
ペットにはケージまたはキャリーバッグでの生活が強いられます。
大型犬等は、リードでつなぎ管理しておく場合が多いようです。
長時間ケージやキャリーバッグに入っていても苦にならないよう普段から慣れさせておくことや、途中で首輪が抜けてしまわないようにサイズを再確認しておきましょう。

避難所では様々な方との共同生活

飼い主にとってペットは「家族の一員」ですが、避難所には動物嫌いの人や被毛によるアレルギーを持っている人もいます。また、動物が苦手ではなくても、避難所での生活はストレスが溜まりやすく、ちょっとしたことでトラブルが起こりがちです。
飼い主さんには周囲に対する配慮・マナーが求められます。
ペットの臭いやトイレの始末はもちろん、無駄吠えや家族以外の人・動物を怖がらないように、きちんとしつけを行っておきましょう。

狂犬病予防接種・混合ワクチン・フィラリア予防・ノミダニ予防

飼い主の義務である狂犬病予防をはじめ、これらの予防はマナーとしても行なっておくべきですし、何よりも、大切なペットを感染症から守るために行いましょう。
これだけは準備しておきたい!ペットのための

防災グッズ




フード・水

日頃食べ慣れているフード。
最近では避難後数日で動物災害救護本部が設置され、ペットフードなども配給されるケースも多くなりました。救援物資が届くまで最低3~5日分を用意しておきましょう。

治療薬・療法食

救援物資が届くようになっても特定の治療薬や療法食はなかなか手に入らないので、少なくとも1週間から10日分程度はストックして持ち出せるようにしておくといいでしょう。
投薬方法をメモし、薬と一緒に保管しておきましょう。
名札・ワクチン証明書

名札に飼い主の名前・連絡先を記入!
ワンちゃんには必ず「犬鑑札」「狂犬病注射済票」を首輪につけておくこと!(これは災害時に関わらず、飼い主の義務として「狂犬病予防法」で定められています。)
もしも名札や鑑札が外れてしまった場合を考え、※1マイクロチップを装着しておくことも一つの方法です。
混合ワクチン接種証明書等も持っているとペットを預けやすくなります。

※1マイクロチップは専用の注射器で動物の背中の皮下に注入するICチップです。チップには個体識別番号が記憶されていて、リーダー(読み取り器)でその番号を読み取ることで個体識別をします。災害対策本部にリーダーが設置されていれば、確実に飼主さんを特定することができます。
ただし、マイクロチップを挿入している場合、MRI検査に影響が出ることがあるので、マイクロチップの挿入には賛否両論があります。

その他あると便利なもの

匂いがついたタオルや毛布・ペットシーツ・包帯・飼育メモなど。
飼育メモには生年月日・不妊手術の有無の他、「神経質で噛むことがある」など個々特有の情報も入れておくと良いです。
最後に・・・

 せっかくペットを受け入れてもらったとしても、ペットの飼育をめぐるトラブルで避難所を出なくてはならなくなった例や、ペットとの車中泊を続けていた女性がエコノミー症候群で亡くなるケースも報告されています。
つまり、避難所でいかにうまく生活を送れるかが重要になってきます。避難所での飼い主さんの気遣いでカバーできる部分は多いとしても、愛犬の無駄吠えや、他人や他のペットに吠えたり飛びついたりするといった問題行動については、その場でどうにかなるものではありません。子犬の時期からきちんと社会化しつけができているかどうかが大切なのです。
いざという時の為に、ペットの預け先を見つけておくのも良いでしょう。
 人間の避難準備とあわせて、普段から「どうすればペットを連れて安全に避難できるか」を考え、避難の手順や優先順位、家族での役割分担等を話し合っておきましょう。
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