渡辺動物病院

獣医師によるコラム

お尻から米粒?!きし麺?!!

すっかり秋めいて朝晩肌寒いですが、みなさん体調を崩されていないでしょうか?
ところで秋と言えば、食欲の秋!!新米がおいしい季節ですね☆新米のおこぼれを頂いているワンちゃん、ネコちゃんもいるかもしれませんが、肛門付近に米粒が付いているのを見たことはありませんか?!
「あら、昨日あげたごはんがそのまま出て来ちゃったのかしら?」
違います!!
それは・・・
「瓜実条虫」(うりざねじょうちゅう)という名前の寄生虫です!!
米粒のような片節
瓜実条虫

虫体の全長は50-70cmに達しますが、「片節」という1cm前後の分節が連なって出来ていて、最末端の片節をひとつずつ離断し、これが糞便と共に排泄されます。排泄された片節は活発に伸縮しながら糞便表面や肛門付近を運動するため、人目に触れやすいのです。

虫が動くので肛門周囲に痒みを感じ、お尻を地面にこすりつける仕草が見られることがあります。時間が経つと乾燥して動かなくなるので、その姿はまさに米粒!!

では、どうやってこの虫がワンちゃんやネコちゃんに感染するのでしょう?!
原因は、ノミです!!
瓜実条虫の生活環
よって、予防方法は単純♪ ノミの予防・駆虫を定期的に行えばよいのです!!



ちなみに、寄生虫には様々な種類があります。
当院の患者さんに多い他の寄生虫をランキング形式でご紹介しようと思います。ここ静岡県島田市付近に多い寄生虫です。

輪ゴムのような虫体
1位 回虫

「お尻から白い輪ゴムが出てきた?!!」


体長は4-18cm、色は白色~黄白色。主に3カ月齢未満の子犬に感染します(ネコちゃんは成猫でも感染します)。
何故子犬かというと、お母さんのお腹の中にいる時に胎盤を介して(犬のみ)、もしくはお母さんの乳汁を介して(犬・猫)感染するからです。
ですから、子犬や子猫がお家にやって来たら、
必ず一度は糞便検査を受けましょう!
回虫の生活環
成犬が感染すると回虫は幼虫のまま体内にとどまり、妊娠した場合に子犬への感染源となります(成犬の場合、糞便検査で寄生虫が検出されなくても感染している可能性があります)。

子犬や子猫が感染すると、下痢嘔吐発育不良お腹が膨れるなどの症状が現れます。また、元気が無くなったり、体重減少、貧血なども見られ、ひどい場合には命に関わることもあります。一方、成猫や成犬が感染すると、下痢が見られることもありますが、多くは無症状です。
糞便中のオーシスト
2位 コクシジウム

顕微鏡でしか見えない小さな寄生虫です。

糞便中に排泄された虫の卵(オーシストと言います)を口から摂取したり、オーシストを食べたネズミを食べると感染します。オーシストは丈夫で、環境中で長く(場合によっては1年以上)生存できるため、直接便に触れなくても感染する危険性があります。

もしも感染してしまったら、食器や、糞便の付いた物は毎回熱湯消毒をする必要があります。

さらに、今まで紹介した虫は基本的に1回駆虫薬を使えば落ちますが、この虫を退治するためには、最低1週間毎日駆虫薬を飲ませる必要があります。
コクシジウムの生活環
子犬や子猫が感染すると、水のような下痢粘液や血が混ざった下痢がみられ脱水を起こすこともあります。嘔吐や食欲の低下により、発育不良や衰弱が起こることもあります。
成猫や成犬では、下痢や軟便が見られることもありますが、多くは無症状です。
きし麺のような虫体
3位 マンソン裂頭条虫

「お尻からきし麺?!!」
体長はなんと、0.6-1.5mにもなります!!この虫も瓜実条虫と同じように片節からできていて、数個の片節が連なって糞便と共に出て来ます。

カエルやヘビ、鳥を食べて感染するので、お外に行くネコちゃんに非常に多いです!

大抵の駆虫薬は飲み薬がありますが、この虫の駆虫には注射が必要です。また投与量も多いので、注射の副作用で一時的に元気食欲が無くなることがあります
マンソン裂頭条虫の生活環
※各生活環は一部簡略化してあります。
※画像出展:「犬・猫・エキゾチックペットの寄生虫ビジュアルガイド」interzoo
ここで紹介した虫はごく一部で、ワンちゃん・ネコちゃんに感染する寄生虫は他にもたくさんあります。「うわぁ~~気持ち悪い!!」で終わらせてはいけません!いずれの虫も、下痢だけでなく、大量寄生すれば元気や食欲が無くなります。特に子犬や子猫では命に関わることもあります。人に感染する虫もいます

定期的な糞便検査と予防を心がけましょう。

予防方法
・ネコちゃんを自由に外に出さない
 ※どうしても外出してしまうネコちゃんは定期駆虫を行いましょう
・お散歩中に、他のワンちゃんやネコちゃんの糞便に近づかないようにする
ノミの定期駆虫・予防

 ・多頭飼育をしているお家では、誰か一頭が感染したら、全頭同時に駆虫を行う

それでも、もしも虫を発見したら、虫と便を持って来院して下さい。
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