渡辺動物病院

獣医師によるコラム

狂犬病について

狂犬病という病気について、皆さんはどれくらい知っていますか?

狂犬病は、全ての哺乳動物に致死的な神経症状を引き起こす人獣共通感染症です。
狂犬病ウイルスは主に唾液中に排出されるため、感染動物による咬傷が感染源となります。致死率はほぼ100%で、有効な治療法がなく、安楽死が選択されることもあります。

狂犬病は、こんな恐ろしい病気なのです。

現在日本では狂犬病に感染した犬はいません(動物の国内最終発生は1956年)。

これは、狂犬病が稀な病気だから…ではないんです!

実は狂犬病は、世界中で動物や人の死亡が多数報告されており、日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国々を除いて、全世界に分布しています。

そう…日本は、世界でも数少ない狂犬病清浄国なのです!
しかし、一旦国内に入って流行してしまうと、清浄化するのは非常に困難です。


下の地図をご覧下さい。
緑色に塗られているところは狂犬病清浄国です。
それ以外の塗られていない部分は、全て狂犬病が発生している地域です。


いかがですか?いかに清浄国が少ないかをお分かりいただけたでしょうか?
しかし、清浄国だからといって安心してはいけません。
そして、「うちの子は大丈夫」なんて思っていてはいけません!!

清浄国を守る一番の対策は…犬における狂犬病予防注射の接種です。

そこで、国内には狂犬病予防法という法律があり、犬の飼い主には以下のことが義務付けられています。

 1.市町村に犬を登録すること
 2.犬に毎年狂犬病の予防注射を受けさせること
 3.犬に鑑札と注射済票を付けること


国内の犬の50%以上が有効な抗体価(予防能力)を持っていれば、たとえ国内に狂犬病ウイルスが侵入したとしても、大流行は抑えることが出来ます。
しかし、現在日本の予防注射頭数は推定50%以下で、そのうち有効な抗体価を持つ犬はさらに少数になります。
このままでは、狂犬病の脅威を免れることは難しくなります。

皆さん、毎年狂犬病の予防注射は必ず受けましょう!

狂犬病予防注射は、市町村の集合注射でも接種することができますが、
動物病院で接種することをお勧めします。

その理由は、

・一頭ずつ身体検査を行って、健康であることを確認した上で接種することができる
・万が一予防注射による副作用が起こってもすぐに対処できる
・犬同士のトラブルを避けるため
 (昨年の集合注射で、大型犬のリードが外れ小型犬に噛み付く事件がありました)


わんちゃんにとって予防接種は非常に大事なことですが、集合注射によって起こりうるトラブルは未然に防ぐ事も大切です。
わんちゃんによっては、注射をした後で体調を崩してしまう子もいますので、そういった時も戸別注射ですとすぐに病院で対処ができます。
 
今一度、狂犬病・予防接種方法をご家族のみなさんで話し合われてみてはいかがでしょうか?

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