渡辺動物病院

獣医師によるコラム

食物アレルギー

前回のコラムでは、環境アレルゲン(花粉やダニなど)が原因となる犬アトピー性皮膚炎についてお話ししました。
そこで今回は、食物アレルゲンが原因となる食物アレルギーについてお話しします。
まず疑問に思われるのは、うちの子は犬アトピー性皮膚炎なの?食物アレルギーなの?という点でしょう。

ここで、二つの特徴を挙げてみます。
しかし実際には、犬アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを両方持っていたり、二次的に感染を起こしていることが多く、上記の特徴だけでは診断出来ないことが大半です。

まずは細菌やカビ、寄生虫の感染の有無を調べ、感染があるようならその治療を行います。
感染症は治って皮膚はある程度キレイになったけれど、やっぱり痒がる。
こういう場合に、アレルギーを疑います。

では、アレルギーの原因は何でしょうか?
1.ノミやダニのアレルギー
2.植物に対するアレルギー
3.食物アレルギー

血液検査でそれぞれに対する抗体(前回のコラム参照)の測定を行い、原因を明確にするのも一つの手段です。

また逆の発想で、排除できる物から排除して行くのも一つの手段です。
1.ノミやダニのアレルギーノミとダニの駆虫を定期的に行いましょう。
 毎月一度皮膚に塗布するスポット剤が有効です。

2.植物アレルギー⇒お庭にある草花、お散歩コースにある草木は数限りないですね。
 お外に出ない子でも窓を開けた時に花粉が舞込んで来るかもしれません。
 人の衣服や洗濯物に付いて運んでしまうこともあるでしょう。
 よって、植物アレルギーを除外することは極めて困難です。

3.食物アレルギー⇒アレルギーが出にくい食事に変えてみます。
 これを除去食試験といい、食物アレルギーの確定診断法かつ治療法です。
では、1の過程でどんな食事を与えればいいのでしょうか?

その子が生まれてから今までに食べて来た食事が明確であれば、比較的簡単です。
食物アレルギーは、今までに食べたことのあるタンパク質や炭水化物に対する抗体をワンちゃんやネコちゃんが体内で作り出してしまうために起こるからです。
ですから、過去に食べたことのないタンパク質や炭水化物を用いた食事にすればいいのです。

ここで問題となるのは、ヒトの食事を日常的にもらっている子です。
そういうワンちゃんやネコちゃんには、アレルギーを起こさない粒子レベルまでタンパク質を分解した食事を用います。
この処方食であれば、理論的には今まであらゆる人間食を食べて来た子でもアレルギーを起こさないはずです。

一口にアレルギーの子用の食事と言っても、このように様々な種類の処方食があります。
実際に「うちの子にはどの食事がいいの?」という点は、獣医師と十分に相談して決めて行きましょう。

このように食事療法を進めて行きますが、注意点があります!!

アレルギー用の処方食というのは、

食べればアレルギーが治るのではなく
それしか食べなければアレルギーが抑えられる

ということです。


ここまでお話すると、「うちは無理だわ・・・」と思う方もいらっしゃると思いますが、
その子に合った食事が見つかれば、薬を飲まなくても慢性的な痒みから解放されるのです!!

獣医師と相談しながら根気よく進めて行きましょう。


最後に、食事療法を実施したワンちゃんをご紹介します。

柴犬 12歳 女の子
・食事療法
・二次感染の治療(抗生物質の内服)
・薬用シャンプー・マイクロバブル
を実施しました。
Before
After(3週間後)
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