渡辺動物病院

獣医師によるコラム

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニア


近年,非常に人気の高いダックス・フンド。
 従来この犬種は,ヨーロッパにおいて地中海に棲むアナグマを狩るのに用いられていた品種でしたが,その愛くるしい表情,長い胴体と短い手足などの独特の特徴から現在の伴侶動物としての地位を獲得しています。それゆえ世界中で愛される品種となり,日本の街中でもダックス・フンドを散歩させている飼い主さんをよく見かけますね。しかしながら,ある特定の品種が爆発的に流行するとその犬種特有の病気も増えてくることがあります。
 ダックス・フンドの代表的な疾患は,進行性網膜萎縮症,アレルギー,椎間板ヘルニアなどが挙げられます。

今回はその中でも椎間板ヘルニアについてわかりやすく解説していきます。


椎間板ヘルニアとは・・・??


 椎間板は背骨と背骨の間をつないでおり,ショックを吸収するクッションの働きをしています。椎間板ヘルニアとは,椎間板に変性が生じ椎間板の中に入っている物質がその上を通る脊髄を圧迫し,さまざまな神経症状を引き起こす病気です。

起こしやすい犬種


 ダックス・フンドは椎間板ヘルニアを起こしやすい代表的な犬種であり,早ければ2歳齢で発症し,突然生じる急性型が多いといわれています。

ダックス・フンドのように急性に起こりやすい他の犬種としては,ビーグル,トイプードル,ペキニーズなどがいます。もちろん,症状がゆっくりと進行していく慢性型の場合もありますが,それらは通常犬種とは関係なく加齢に伴って起こることが多いです。

どんなときにおこるの?


 
 椎間板ヘルニアはソファーの昇り降りやジャンプ,二足歩行あるいは動物の背中に重いものがのしかかったりすることでおこることが多いです。また,散歩中に突然痛がり出すというケースも稀ではありません。

どんな症状がみられるの?


 飼い主さんが気づかれる症状の多くは突然足を引きずる,動物を抱き上げるときに痛がって鳴く,おやつをあげるときに頭を上げることを嫌がったりするなどの症状です。

 軽度から重度の後肢のマヒによる歩行異常,背中の痛み,時には自力で排尿排便ができなくなることもあります。また,頚部周辺でヘルニアが発症すると,重度では呼吸困難になることもあります。さらに,脊髄軟化症といって脊髄が壊死してしまう病気に進行することもあるため,椎間板ヘルニアは命にかかわる重大な疾患ということを覚えておきましょう。

もし起こってしまったら・・・


 すぐに病院へ連れて行きましょう。そして,くれぐれも動物を安静に保って,それ以上の悪化を防ぎましょう。当院ではレントゲン検査,場合によってはCT・MRI検査をお勧めすることもあります。

どうやって治療するの?


 当院では手術による治療を積極的に実施しております。痛覚のある段階であれば90%以上の回復が見込めます。軽度の場合にはお薬と絶対安静(ほとんど動けないような小さなケージ内で安静)をすることで症状が治まることもあります。

 また,症状が進行しているあるいは痛みが強い場合には外科手術が必要です。しかしながら,外科手術を行ったとしても完治しないこともあり,長期に渡るリハビリあるいは車いすによる介護が必要になる場合もあります。

いずれにせよ,早期診断・早期治療が重要です。

再発・予防


 椎間板ヘルニアの再発率は30〜40%です。普段から背中に負担をかけないように心がけましょう。散歩や激しい運動は極力避け,首輪から胴輪にかえてみるのも1つの手段です。
フローリングの床は滑るので,カーペットなどを敷いてみるのもよいですね。

 また,肥満であることは関節にも負担をかけるため,体重もしっかりコントロールしましょう。
 
 予防に勝るものはないため,特に椎間板ヘルニアを起こしやすい犬種はこれらのことを日頃から心がけましょう!
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