渡辺動物病院

獣医師によるコラム

変形性関節症

変形性関節症

変形性関節症」という名前を一度は聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?あるいは、テレビなどで「膝が痛くて階段が登れない…」などといったヒトの広告を観たことがあるのではないのでしょうか?
 近年、動物たちの高齢化や生活様式の変化により私たちと同様に「変形性関節症」を患う動物たちが増えてきています。
 では「変形性関節症」とはどのようなものなのでしょうか?

「変形性関節症」とは?
様々な原因により、関節を構成している骨と骨とが擦れ合うことで関節軟骨が破壊され、関節が変形し、痛みやこわばりを生じる病気です。また「関節炎」とも言います。
原因には加齢、肥満、先天的な関節疾患、外傷による関節疾患などがあります。先天的な関節疾患としては股関節形成不全膝蓋骨脱臼、外傷によるものでは膝の前十字靭帯断裂があります。その他には、滑りやすいフローリングでの転倒や、フリスビーなどの激しい運動が原因になることもあります。

症状
・足を引きずるような歩き方をしている
・足を触ると痛がる
・遊んでいる時に、突然大きな声で鳴き動かなくなることや、歩き方がおかしくなる
・階段の昇り降りを嫌がる
・寝ている状態から起き上がるときに時間がかかる…etc.
しかし上記のような症状は「変形性関節症」だけで認められるものではありません。椎間板ヘルニアなどの神経疾患でも認められることがあるので、このような症状がみられた場合には早期に来院することをお勧めします。

診断
・問診
上記のような症状がないかを確認します。
・歩行検査・触診
 実際に歩いている動物を観察し、痛みがあるかを触診で確認します。
・レントゲン検査
 痛みのある部位をレントゲン撮影することで、関節の変形や異常を見つけます。
変形性関節症では矢印で示したような関節の変形が認められます。
・CT検査
 レントゲン検査で異常がわからない場合に行います。特に肘の変形性関節症の原因となる病気を見つけるときには有用であると言われています。しかし、CT検査には麻酔が必要となります。

 
治療
変形性関節症に対する治療は、大きく分けて、痛みの管理、軟骨の保護、食事療法、運動療法からなります。
・痛みの管理
痛み止めのお薬で痛みを和らげます。
・軟骨の保護
 軟骨の保護を促すような成分の注射やグルコサミン、コンドロイチン硫酸、緑イ貝抽出物などのサプリメントを用います。
・食事療法
 関節に負担をかけないように体重減量を目的にした療法食や、上述した関節に配慮した栄養成分を含んだ療法食を用います。
・運動管理
 痛みが原因で脚を使わなくなり筋肉量が低下した動物に対しては、リハビリなどにより筋肉量を増やしてあげる必要があります。また適度な運動を行うことで体重管理にもつながります。

重症の場合には骨頭切除人工関節などの外科手術が必要になることもあります。


さいごに
「変形性関節症」は残念ながら完全に治る病気ではありません。一度発症してしまうと進行し続けてしまう病気です。しかし、適切な治療をすることで病気の進行を遅らせることができ、症状の改善も認められます。そのためには早期発見が非常に重要であり、体重管理や、フローリングなどの滑りやすい場所での生活を避けたり、足裏の毛をカットしてあげたりとご家庭でも予防の為にできることが多くあります。当院にも様々なサプリメントや療法食をご用意しておりますのでお気軽にスタッフにご相談下さい。
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