渡辺動物病院

獣医師によるコラム

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症
 
 今回は子宮蓄膿症という病気についてお話させて頂きます。
『うちの子も子宮蓄膿症で手術したことがある』という方もいるのではないでしょうか。
避妊手術をしていない雌犬の24%において10歳までに子宮蓄膿症になると言われています。

Q どんな病気
 子宮蓄膿症とは、避妊手術をしていない雌犬で起きる病気で子宮の中に細菌感染が起きて膿がたまってしまうことで発症します。卵巣から放出される黄体ホルモンが子宮蓄膿症の発生に関係しているといわれています。多くは高齢犬でみられ、「生理の後1~2か月経過してから発症がみられることが多いです。」ただし若齢犬でも発症することがあるので注意が必要です。

Q 症状
 多くは「膣から膿が排出されます」が、一部の子では膿の排出がみられない事もあります。その他ご家族が気づく症状としては、発熱、食欲不振、元気消失、飲水量と尿量の増加、嘔吐、お腹が張っているなどです。
症状の重症度は子宮内の細菌が出す毒素の量によって異なってきます。重篤な病状に進行すると毒素により腎不全や敗血症を起こしたり、お腹の中で子宮に穴があいて腹膜炎を起こしたりと、「命に係わる病気」です。

Q 診断
 血液検査で全身状態をチェックし、レントゲン検査やエコー検査などで「子宮に膿がたまっていないか」を確認します。


↑ 子宮内に膿がたまったエコー画像 ※黒く見えているのが膿です。
    『小動物の超音波診断アトラス』より引用

Q 治療
 治療は、大きく分けて内科的治療と外科的治療があります。内科的治療ではお薬を飲んで膿を減らしていくのですが、多くの場合再発をしてしまいます。
早い段階で手術をすれば助かるケースが多いので」子宮破裂など重篤な病状に移行する前に「子宮と卵巣を摘出する外科的治療が最も推奨されています。

Q 子宮蓄膿症にならないためには?
避妊手術を行えば子宮蓄膿症にはなりません。」高齢で病気になってから手術をするよりも、若くて元気なうちに手術を行ったほうが体への負担や麻酔の危険性は少なくてすみます。
避妊手術をしていない中高齢のワンちゃんで最近『食欲がなくなってきた』『お水をよく飲むようになってきた』そして『膣から膿が出ている』ということがあれば要注意です。
早めにご相談ください。

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